お知らせ / 日々の記録

2023年1月1日

 新しい年が来ました。

 ことしも、どうぞよろしくお願いいたします。

 新年に当たり、思うところを記しておきます。

 昨年は、宮澤賢治と大畠ヤスさんの恋から百年の節目の年に当たり、これまでの読み解きをまとめた自主制作本『宮澤賢治 百年の謎解き』(T&K Quattro BOOK)を、アマゾンのパブリッシングシステムを利用して出版いたしました。

 現時点での考えを、ほとんど網羅的に盛り込んでおりますので、決して読み易くはありませんが、それでもお読みくださり、ありがたいご感想をお寄せくださった読者の皆さまには、こころからお礼申し上げます。

 百年前の恋については、推理によって語るしかない側面がありますが、確証がなければ語れない研究の世界では、こぼれ落ちてしまう存在は必ずあり、それを掬いとって文字にしておくのが、文学の役割ではないかと考えます。

 大畠ヤスさんの存在が消えてしまえば、賢治作品のなかには、決して解けない謎が残るでしょう。その恋を踏まえたほうが賢治とその作品を理解しやすいという方のために、いま、書き残しておくことが必要だと判断しております。

 ただ、宮澤賢治の恋を明らかにするのが、わたしの目的ではありません。

 岩手に生まれ、自然に親しんで育った者として、わたしは、賢治が岩手の自然を見つめ、残していった言葉の数々を、かけがえのない宝物だと感じています。

 賢治の自然の言葉を理解し、できればたくさんの方に伝えてゆくために、その恋を読み解いておくことが必要でした。

 わたしはこれからも、エッセイという文学のジャンルで、賢治の自然の言葉を紹介してまいります。

 賢治のおはなしは、どれほど空想的に感じられても、岩手の自然のうえに成立したファンタジーです。自然が失われてしまえば、賢治のおはなしは、完全なる空想世界になってしまうでしょう。

 岩手に暮らし、自然と文学に関わる者として、岩手の自然を見つめてゆくことと、賢治の自然の言葉を読み解くことは、互いに分かちがたい作業であると思っています。

 賢治の恋を読み解く過程で、その作品を、音楽とともに朗読する活動も続けてまいりました。

 これまでに11枚のCDを制作して販売もしてきましたが、この活動を通して得られた最も大きな成果は、わたし自身が、賢治の言葉をよりいっそう深く理解することができた、という点に尽きるかも知れません。

 理解を深めるためなら、ただ読むだけでよさそうなものですが、費用をかけてCDを制作することは、いっそうの吟味を伴う真剣な作業でした。だからこそ、理解を深めることができたと考えています。

 CDの売れ行きも、先に述べた自主制作本の売れ行きも、はかばかしいものではありませんが、賢治を理解しようとするわたしどものプロセスを、ともにお楽しみくださる方が増えるであろうことを、信じて続けております。

 かがく絵本のテキストを書き、自然の美しさや生きものの愛しさを、多くの子どもたちに伝えてゆく仕事は、岩手の自然を見つめること、宮澤賢治を読むことと、まったく同じ動機に根ざすものです。

 また以下は、とてもささやかな話なのですが、昨年は1冊のスケジュール帳を、途中で放棄することなく使い通しました。

 言葉を仕事にしているせいか、言葉に強い思い入れがあり、辛いことや嫌なことが続き過ぎると、手帳に記すことに抵抗があったり、記した手帳を使い続けることができなくなったりして、気分一新、年の途中で手帳を変えるときもあるのです。

 昨年は、正直なところ山あり谷ありの1年で、倒れたひとのつき添いで2回も救急車に乗ったり、ウエブ上の言動に耐えかねて警察に相談に行ったりしました。

 しかしそれらも、わたしの1日と思うことができたのです。自分なりに考え、しかるべき対処をしたことが、よかったのかも知れません。

 いのちの危機を目の当たりにして愕然としたり、他者の言葉に手が震えたりしたことも、確かにわたしの1日で、いつかきっと、その経験が自分の力になる日が来るだろうと思えたのです。

 可愛らしい表紙に魅せられ、思わず衝動買いしたスケジュール帳に感謝して、きょうから、新しい1冊を使い始めるところです。

 これからの365日、どんな言葉が綴られるかを楽しみに、新年のごあいさつを終えようと思います。

 ことしは、昨年よりは頻繁にエッセイを投稿してゆきたいと考えています。どうぞよろしくおつき合いくださいますよう、お願いいたします。

 ここまでお読みくださった方々に、こころからの感謝を込めて。

 皆さまに、たくさんの幸いが訪れますように!

 365日

きょうという日が
ひと粒の石ならば
いちねんは
365粒の
ネックレスだから

きょうという日を
何色にしようと考える

曇る日も雨の日も
ひびの入る日もあるけれど
空がとても美しかった日や
香りのよい花に会った日が
曇りやひびをも美しくする

いちにち
いちにちに
ありがとうを

(2022年12月30日のSNSより)

 文中で紹介いたしました自主制作本やCDは、ネットショップでお求めいただけます。