かぞくのカタチにこめたキモチ 

 11月8日、福音館書店から新刊が出ました。

『いろんないきもの かぞくのカタチ』

 絵を、たしろちさとさんが描いてくださいました。

 かがく絵本の書き手として、自分の目で見たものを中心に文章を書いてきたわたしですが、この本では、つぶさにすべてを見られるわけではない生きものの姿を、調べて書くということに挑戦しました。

 ジャングルにすむマウンテンゴリラや、南極にすむコウテイペンギンはもちろん、書こうとすれば身近なカラスだって、分からないことだらけでした。

 間違いを書いてはたいへんですから、編集者さんを通じて専門家の先生に見ていただき、ファクトチェックをしたのですが、そのやりとりが、わたしにとっては、とてもとても刺激的でした。

 専門家の先生方が、どんなにその生きものを愛しているか……。

 どの先生も、あくまでも科学的な見解を述べてくださっているのですが、その言葉の後ろから、愛があふれ出してくるのを、わたしはひしひしと感じていました。

 そうして、思ったのです。

 愛とは、その存在がずっとそこで、健やかに生き続けていてほしいと願う気持ちに違いない、と。

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 この本では、新しいいのちが育つために力を合わせる「なかま」を、「かぞく」と呼んでみました。

 生きものたちを見ていると、かぞくの在りようは、決してひとつではありません。

 いろいろなかぞくがある。

 そのことを、たくさんの方に感じていただけたなら、と願っています。

 そしてもうひとつ、この本を書きながら感じたのは、新しいいのちが育つために必要なのは、安心して眠れる居場所と、大きくなるための食べもの、このふたつなのだということでした。

 あらゆる子どもが、お腹を空かすことなく、安心して眠れますように……。

 そう祈りつつ、新しい本が旅に出るのを見送ろうと思います。

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 先日の講演会で、出来立てほやほやのこの本を販売させていただきました。

 わたしは本にサインするとき、必ず数行の言葉を書き添えるのですが、この本には、

「あしたもいい日になりますように」

 と書くことに決めました。

 まだ息子たちが小さかったころ、わたしは彼らを眠らせるときに、

「おやすみなさい。あしたもいい日になりますように」

 と声をかけていたのでした。

 子どもたちがあしたを楽しみにできる。

 かぞくのカタチはいろいろでも、たいせつなことは、案外シンプルなのかも知れません。

 あなたのあしたが、きっといい日でありますように。

『いろんないきもの かぞくのカタチ』(たしろちさとさん絵、福音館書店)、どうぞ書店さんでお手にとってご覧ください。