新刊『宮澤賢治 心象スケッチ十の旅』が、岩手日報社より9月21日に全国一斉発売となります。

 2024年8月27日、宮澤賢治の128回目の生誕日に、新刊『宮澤賢治 心象スケッチ十の旅』(岩手日報社)が、無事に校了いたしました。

 発売は9月21日。なんと宮澤賢治の命日に全国一斉発売という素晴らしいスケジュールは、岩手日報社さんが決めてくださいました。

 原稿は3月からおよそ3か月で書き下ろしました。書きながら、(ここは、こういう気持ちで書いたんだよね?)と、幾度となく賢治に問いかけていたので、賢治ゆかりの日に校了し、賢治ゆかりの日に発売になるのは、わたくしとしても嬉しい限りです。

 すでに予約が始まっていますので、ぜひ、ご予約いただければありがたく思います。

 帯のキャッチコピーは「KENJI with LOVE」といたしました。

 読み解き解説を添えた50編の作品は、印象的なフレーズが含まれていたり、賢治独自の試みがなされていたりして、多くの方に読んでもらいたいものを厳選しました。決して、賢治の恋にだけ着目して選んだのではないのですが、執筆を終えたいま、かなりの数の作品に大畠ヤスさんとの恋が影響を及ぼしていたのだと、言わざるを得ません。

 かつて、賢治の恋を語るのは、たいへんに勇気の要ることでした。賢治は、女生とは縁のない人生を送ったと広く信じられていましたし、そういう賢治を愛している読者の方々も、たくさんいらっしゃいました。しかし大畠ヤスさんは、賢治にとって『春と修羅』を書いた原動力となり、別れてもなお案じ続けた最愛の女性であったと、自信をもっているところです。

 大きな転機は、賢治が「朗誦伴奏」という音声表現を望んでいたと知り、わたし自身も「朗誦伴奏(音楽とともに朗読すること)」を試みながら作品を精読し直したことでした。賢治の作品には、音声にしてみなければそれと気づきにくい仕掛けが、そこかしこに隠されているのです。

 このたびの新刊には、音韻を吟味することによって新たに分かった事柄を、数多く盛り込んでいます。「雨ニモマケズ」の項では、「ヒドリ」という言葉が「ヒデリ」の誤記だとされている問題についても、音韻という側面から新たな解釈の可能性を示してみました。

 賢治は家族を愛し、教え子を愛し、自然を愛し、恋人を愛していました。

 新刊においてわたくしが提示する賢治像は、多くの方にとって意外なものかも知れませんが、こういう賢治も面白い、と感じていただけたなら幸いです。

 賢治は、誰かがどこかで苦しんだり悲しんだりしていることに耐えられません。

 世界ぜんたいの幸福を願った賢治の心には、身近な人々への溢れんばかりの愛がありました。個々の愛を知っていればこそ、世界のどこかで暮らしている、会ったこともない誰かの幸せを願うこともできたのだと、わたくしには思われます。

 9月21日発売の新刊『宮澤賢治 心象スケッチ十の旅』(岩手日報社)は、全国の書店さんでご予約いただけます。発売まで、どうぞお楽しみにお待ちくださいませ。