岩手弁の音楽性と賢治の言葉の身体性~「グスコーブドリの伝記 vol.1」ご感想

 ニューアルバム「グスコーブドリの伝記 vol.1」を、ご予約の皆さまにお届けしたところ、ご感想をいくつか頂戴しています。

 きょうはそのなかから、おふたりにご登場いただいて、ご感想を紹介したいと思います。

岡 浩一郎さん

 澤口たまみさんの新作CD「グスコーブドリの伝記 Vol.1」が届いたので、早速聴きました。

 かねて澤口さんが目指していた、朗読が音楽の一部となる「朗誦」スタイルは、今回軽みを増してまた一つ究められていると感じました。
 いつも音楽を担当しCD製作を支えている石澤さんをはじめとする3人のミュージシャンも、新鮮で心地よいサウンドを一貫して奏でていて、澤口さんの朗読にやさしく寄り添っています。

 今回、澤口さんの朗読に岩手の言葉の抑揚を取り入れていることが「朗誦」がより自然に耳に届くことに大きな役割を果たしているように思います。
 私は現在61歳で、盛岡に7年間暮らしましたが、残りの54年間を過ごしたどこの地の言葉よりも岩手の言葉は音楽的に聞こえます。

 澤口さんがじっくり時間をかけて育んだ今回のCDは、ブドリの波乱に満ちた物語を味わうことも、純粋に音楽として心穏やかに楽しむこともできます。物語の続きの「Vol.2」が届くのが今から楽しみです。

 こうして、わたしの仕事を見守り、感想を送ってくれる友がいます。岩手大学農学部でともに昆虫を学んだなかまです。

 宮澤賢治ご自慢の標本室は、わたしたちが在学時は、昆虫学研究室にありました。わたしたち学生は、そこで、賢治も見たであろう「ヤママユ」の繭の標本を見たり、賢治が「グスコーブドリの伝記」に書いている「てぐす」すなわち「野蚕」について学んだりしたのです。

 よき友を得られたこと、大学生活の大きな幸いです。

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 もうおひとり、ご紹介します。

 ベースと声の音源をもとに、ドラムとピアノを別々に録音したというCDの制作方法に対し、素直に驚きの気持ちを綴ってくださいました。

川村 智子さん

 拝聴させて頂きました。「グスコーブドリの伝記」は読んでおらず、ひとまず聞いてみました。

 過去の体験と重ね合わせて言葉にしようとしても到底難しく、うわあ〜! としか言えずにいます。

 個々に録音なさったとお聞きしましたが、とてもそうは思えないのです。バラバラに聞こうとしても、がっぷり組み合っていて、私には出来ませんでした。

 ベースと朗読から始まった、それもどんな作曲法なのだろう? とか、不思議がいっぱいです。

 4本の太い柱がそれぞれに、それでいて、同じフィールドに自由に駆けて行くイメージを思いました。

 それから、通して面白さが続くので、どこで切ろうにも切りづらいです。

 足らない受容体と表現で、本当にすみません、
 私はそんな感想を持ちました。
 応援メッセージに感じてくだされば嬉しいです。

 どなたか、上手に述べて下さる方がいらっしゃいますように。

 川村智子さんは、ダンスを学び、日々、研鑽を積まれておられます。わたしどものCDを、体ごと受け止めてくださったことがよく分かるご感想で、とても嬉しく拝読しました。

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 岡さんのご感想には、岩手の言葉は音楽的である、と書かれていました。

 宮澤賢治は、自らの文学の完成に音楽が必要だと考え、自らオルガンやチェロを独学しました。そしてそれは、自作を朗読するときに、即興で伴奏を添えることが目的だったと伝えられます。

 賢治の作品は、声に出して音楽とともに読むことを意図して書かれたものだった。

 それが、わたしどもがVOICE&MUSICの活動を続けている大きな理由です。

 賢治の作品が当時の文壇……主に児童文学者に評価されにくかった理由のひとつとして、方言を多用していることがあげられますが、賢治は岩手方言のほかに、標準語、ときに江戸弁と思われる言葉をも使っています。方言しか使えなくて、仕方なく書いているわけではないのです。

「方言の音楽性」こそは、賢治が方言を用いた最大の理由だったとわたしは考えます。

 もちろん、賢治が願っていたものが、わたしどものサウンドと一致しているとは限りませんが、きっと賢治にも喜んでもらえるよう、願いをこめて制作しています。

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 もうひとつ、この活動に一流のミュージシャンが参加している理由は、ダンサーである川村さまが聴いてくださり、音を構成するそれぞれの柱が、自由に駆けているイメージを抱いてくださったところにあります。

 賢治がベートーヴェンの交響曲をはじめて聴いたときのことを、弟の清六さんは、「首を動かしたり手を振ったり、飛んだり跳ねたりしていた」と記しています。そして賢治は「俺もこういうものを書かねばならない」と言ったそうです。

 賢治の言う、ベートーヴェンのようなものを書く、とは、いろいろな解釈ができそうです。

 しかしひとつには、音楽を聴くときと同じように、思わず体が動き出すような文章を指しているに違いないと、わたしは推察いたします。

 実際に、賢治が身ぶり手ぶりを交えて体を動かしながら朗読している姿を見た教え子さんはたくさんいます。賢治にとって言葉を声にすることは、体を動かすことと切っても切れない関係にあったのでしょう。

 したがって賢治は、方言を駆使したリズムある文体で、音楽的な作品を書くとともに、そこに楽器の演奏を加えることで、聴いている者も「首を動かしたり手を振ったり、飛んだり跳ねたり」できることを目指していたように思います。

 ビートが効いて、踊れる音楽であることは、クラシックからポップスまでジャンルを問わず重要ですが、どのジャンルにおいても、そう易しいことではないようです。VOICE&MUSICでは、経験豊富で優れた技術を持つミュージシャンの協力により、聴いて思わず体を動かしたくなる賢治作品を目指しています。

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 最新のアルバムから、ボーナストラックの「雨ニモマケズ」をご試聴くださいませ。

CDのお求めは、こちらのブログからもお申込みいただけます。

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 なお、「グスコーブドリの伝記」は長編のため、「vol.1」と「vol.2」の2枚に分かれております。2枚目は、12月ごろの発売となります。

 今回のお申込みで、2枚目をあわせてご予約いただくことも可能です。

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