朗誦伴奏とは、朗読に即興で伴奏を添えていく表現方法で、宮澤賢治がチェロ習得の目的を尋ねられて口にしたものです。
わたくしどもは、朗誦伴奏という表現方法に込められた賢治の思いを探るべく、朗誦伴奏の公演を続けてまいりました。
これまでに100回あまり開催してまいりましたが、ことし最後の朗誦伴奏会を12月20日に設定し、バイオリニストの太田惠資さんをお迎えする予定です。
12月20日は『注文の多い料理店』の「序」に記された日づけから、ちょうど102年に当たることから、「102年後の出版祝賀会」と題して開催いたします。
宮澤賢治にお詳しい方は、『注文の多い料理店』が出版されたのは1924(大正13)年の12月であり、「101年後」ではないかとお思いになるかも知れません。
実際に出版されたのは1924年でありながら、「序」には「大正十二年十二月二十日」と書かれていることは、『注文の多い料理店』をめぐるひとつの謎でありましょう。
賢治が「序」の日づけを、実際の出版年月日と変えたことは、賢治ならではの問いかけであろうと、わたくしは考えています。
1923年と1924年。賢治にとって、この2年の決定的な違いは、かつて相思相愛だった大畠ヤスさんの不在でありましょう。
ヤスさんは1924年の6月に渡米してしまいました。賢治が『注文の多い料理店』の「序」の日づけを「大正十二年十二月二十日」としたことは、この1冊にもまた、ヤスさんとの恋を経験していなければ書かれなかった作品が含まれていることを示唆していると思われます。
このたびの朗誦伴奏会では、『注文の多い料理店』から「序」と、愛し合う2羽のカラスが登場する「烏の北斗七星」を。そして、1923年に新聞に発表された電信柱の恋物語「シグナルとシグナレス」から、ふたりの恋の語らいを。さらにヤスさんとの別れが執筆のきっかけのひとつと考えられる「銀河鉄道の夜」から、コロラドの高原のシーンを読んでまいります。
本番まで2か月を切りましたので、新たなチラシで告知を再開いたします。皆さまのご来場をお待ちしております。
入場料は4000円、学生割引がございます。お気軽にお問合せください。

◆ご予約はチラシのQRコードからCafe Bar West 38の申し込みフォームへ。また、こちらのフォームからもご予約を承ります。