2025年10月3日の現場は、まだ朝露が光る盛岡市中央公園の野原でした。頭上には青空が広がり、無数のトンボが翅を光らせて飛んでいます。
いっしょに歩いたのは、市内仙北町幼稚園の5歳さんたち。
仙北町幼稚園では、毎年、未就園、3歳、4歳、5歳の各クラスと保護者を対象に、園庭での昆虫観察会を開催してきました。緑の乏しい住宅地のなかにあって、それでも20年ほど観察会を続けてこられたのは、ひとえに園の熱意によるものです。
数年前からは、3月に卒園を控えた5歳さんのスペシャルプログラムとして、中央公園に出かけるようになりました。
いつも園庭のわずかな緑に目を凝らしている子どもたちにとって、広い野原はどんなにか特別な体験でしょう。手入れの施された芝生ではなく、イネ科草本やカタバミ、イヌタデなど野生の草が生い茂っているのも魅力です。

待ち合わせは、公園に隣接した美術館の広い駐車場でした。
先に着いて立っていると、子どもたちを乗せたバスが到着しました。バスから降りるなり、子どもたちはわたしに尋ねます。
「暑くなかった?」
引率の先生によると、バスのなかでわたしの姿を見つけた子どもたちは、
「あんなにお日さまの当たるところで待っていてくれたんだ」
と、心配していたのだそう。
相手を思いやる優しさが、立派に育っている子どもたち。
来年は小学校に行くため、3歳から続けてきた昆虫観察会も、きょうでおしまいです。
「もう、たまみ先生と会えないの?」
名残を惜しんでくれる子どもたちに、わたしは思いを伝えました。
「虫という小さな生き物を、可愛がり、優しくできることは、とても素晴らしいことだから、大きくなっても、ずっとずっと虫を好きでいてほしいな」
「うん」
瞳に力を込めて肯く子どもたちと、
「ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました」
互いに深々と礼をして、手をいっぱいに振りながら別れました。その小さな後ろ姿は、わたしの宝物です。
野原で小さな命を慈しむとき、その行為は、誰も見ていないだろうし、誰にも褒められないかも知れない。けれども神さまは、きっと見ているよ、と思うのです。
仙北町幼稚園で3月まで園長を務められていた根内純牧師のご著書、『神さまが見ているよ 牧師園長から子育て中の皆さまへ』を、ここに併せて紹介させていただきます。
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